在宅で起きた「わらしべ長者」のようなお話
「恋するココロミ」令和4年11月30日放送
「わらしべ長者」って日本のおとぎ話をご存じですか?
ある一人の若者が、毎日真面目に働いて、なんとか暮らしがよくならないかと観音様に願いをかけたところ、「はじめに触ったものを、大事に持って旅をしなさい。」とお告げをもらって、観音堂をでるやいなや、石につまづいて転び、偶然1本のわらしべに手が触れて、その男はその1本のわらしべを手にもって旅をするというお話です。
先日の出来事です。毎日真面目に働いて、なんとかご利用者様によいことが起こらないかと願っていた私に、こんなことがありました。
ある90歳代のご利用者様のお宅での出来事です。その方はお亡くなりになって、私どもが、ご家族にご挨拶にお伺いしました。ご家族から、亡くなったお母さまが、若いころから大事に集めてきた博多人形だけれども、ごみにすべて捨てるところだ、というお話をお聞きしました。
その方の生前のご様子をしるものとして、それがすべてごみになってしまうことに、胸がしめつけられ、「ご縁があったので、ごみにするなら、私にいただけないでしょうか」とお願いしました。
90年数年の歴史を感じるほど、ほこりが被ったガラスケース入りの博多人形を10体持ち帰ります。さあ、この子たちをどうしましょうと思いながら、そのほこりを一つずつ丁寧に掃除していますと、不思議と、私たちのステーションの他のご利用者様のお顔が浮かんできます。
思い浮かんだ方々は、ご自分で動いて、お買い物に行く事ができない方々でした。
そこで、あっと思いつきます。お買い物の機会のない方々に、携帯電話でぽちっとお買い物するみたいに、お写真をおみせして、ご自分で選んで、気に入ったものが、お手元に届く喜びを感じていただきたいと思い立ちます。
10体のお人形は、大きさも形も、様子もちがうお人形でしたが、不思議と、このご利用者様はこれを選ぶかもと思いながら、お写真をおみせしますと、やはり、私が思い浮かべたお人形を選ばれます。不思議ですね。
選ばれたお人形1つ1つを、それぞれのご家庭にお持ちしますと、とても素敵な笑顔で、喜んでいただけました。
わらしべ長者の若者は、裕福になる旅でしたが、私の旅は、心が豊かになる旅でした。
ちなみに、うちのステーションにも、1体のかわいらしい女の子のお人形を受付にいただきました「おいでやすこ」さんと名付けて、事務所を明るくしていただきました。